ここ最近ずっとチラ裏ばかりで技術的なブログはなにひとつ書いてない齋木です。
「時間がなくて、というのならチラ裏なら書けるのか」というツッコミをいただいても返す言葉がありません…。
きっかけはメッセージ
僕がバイク屋を退職したあと最初に働いた会社は Web 制作会社ではなく、自社でサービスを開発して運営もする会社だった。
そこのサービスではアルバイトもたくさんいたのだが、その時の学生アルバイトで仲の良かった子がいまは中学校の先生になっていて、本当に久しぶりに連絡があった。
「実は中学校で職業調べをやってまして、もし可能なら子供達のインタビューに答えていただきたいのですが…!といってもメールとかですが」
という話で、二つ返事でOKした。
で、答えてみた
そもそもは「プログラマーという職業について」ということだったが、僕が『プログラマー』かと聞かれるとだいぶ怪しい。
ものすごく大きい括りならば確かにそうかもしれないが、残念ながら僕は自分が「プログラマーだ」と認識したことはない。そこには一応断りを入れつつ、自分が日々働く中で考えていることを書いてみた。
書いてみたらまたこれが長いこと長いこと…。とても子どもに読ませる分量ではなくなってしまった。Wordを使っていると画面の下に文字数が表示されるが、最終的に13,000文字弱まで書いていた。我ながらこれはひどい。だいたい僕が書く文章は長いと定評がある(自分調べ)。歳をとるとどうにも話が長くなりがちだ。本当にこんなのでいいのかと自問しつつ、まあそれでも伝えたいことは書けた、と思う(先生には「適宜割愛して」と伝えた)。
いざ書いてみると、これまで特に意識せずにいたものが文章化されて改めてあれこれ考え直すことができた。
中学生向けということで細かい説明は飛ばしたり、逆に冗長と思えるくらい回りくどい書き方になったところもあるが、とにかく丁寧に、わかりやすく書こうとしたおかげで、普段全く考えることのない「自分が仕事をするということ」についてじっくり考えることができた。
たまたま自分の娘が中学生と近い年齢だったということもあって、「自分の子どもに説明するならどうやって説明するだろう」と考えながら書きすすめるのもなかなか楽しかった。
公開してみる
実は書きながら「これだけ大作(笑)書いたんだったら公開できたらいいな」と思っていた。
書き上がってメールに添付して送り返したメール本文に「これ、名前とかはもちろん伏せるので自分のブログで公開していい?」と書いたら
「ちゃんと主任にも確認とってOKもらいました!」
と返事が来たので、書いたインタビュー内容を公開しようと思う。
よく考えたらこれ聞き取りのインタビューでなくてよかった。これがリアルのインタビューだったら途中で飽きられて全カットになるところだった…。
一応お断りしておくが、これは「僕個人の考え」であって何かを代表するようなものではない。そもそも「Web エンジニアをプログラマーと呼ぶな」的な意見も当然あると思う。先に書いたとおり細かい説明は割愛したり、逆に回りくどく説明しているところもあるが、そこはどうか大目に見ていただきたい。
将来有望な中学生たちにこんなに長い独り言がどこまで伝わるかはわからないし、少し経って読み返してみたら非公開にしたくなるような残念なことを書いているかもしれないが、少なくとも「今は」こう思っている、という記録として残しておきたい。
以下がその全文だ。
職業調べインタビュー用紙
S市立S中学校
S市立S中学校のみなさん、はじめまして。
M先生から紹介いただいた、プログラマーのサイキといいます。
最初に、僕の仕事について簡単にご紹介します。
「プログラマー」と一言で言っても、世の中には実はすごく沢山の種類の「プログラマー」がいます。
例えば「ゲームを作るプログラマー」もいますし、「銀行のシステムを作るプログラマー」もいますし、「スマホのアプリを作るプログラマー」もいます。
それぞれのプログラマーに求められる業務内容によって、プログラムを作る(プログラマーは「プログラムを書く」といいます)ために必要なプログラム言語(「コード」と言われる、機械に動き方を命令する文の集まりです)が違いますし、仕事のしかたも大きく変わってくると思います。
そのなかで、僕の仕事は「ウェブサイト(ホームページ)を作るプログラマー」です。「ウェブエンジニア(ウェブ技術者)」とか「ウェブデベロッパー(ウェブ開発者)」といった呼ばれ方をすることもあります。
ウェブサイトは「HTML」というマークアップ言語(これは厳密には「プログラム言語」とは違うものです)で書かれていますが、HTMLだけではただそこに書かれたものを表示するだけなので、『何かを入力したらその答えを計算して出力する』とか、『たくさんあるデータの中から、入力された内容に合致した情報だけを表示する』ような複雑な情報を処理するためにプログラムが利用されています。
なので、僕は「HTML」を書くこともありますし、プログラム(ウェブサイトでよく使われているプログラム言語には「JavaScript」とか「PHP」といったものがあります)を書くこともあります。そのなかでも僕はプログラムを書いている割合が多いので、区分としては「プログラマー」なのかな、と思います。
ちなみに、「プログラマー」に向いている人は「面倒くさがりな人」です(笑)。
プログラムは一度用意すれば同じことをくり返し何度でも、高速に処理します。「毎回同じことやっててめんどくさいなー、こんなこと機械にやらせればいいのに」と思う人がプログラムを書いて機械にやらせます。なので、プログラムを書けば書くほど僕の仕事はなくなっていくはずです(笑)。
プログラムに書く命令のひとつひとつは、たいした量ではありません。でも、そのちいさなプログラムのかたまりがたくさん集まってひとつの大きなシステムになります。そして、なにか入力があったときに膨大な量のプログラムの処理が動いて、最終的にみなさんのパソコンやスマホの画面に表示されている、ということになります。
「プログラマー」というとなんとなく男の人の職業というイメージが強いですが、特にウェブ関連のプログラマーに関してはそんなことはなく、多くの女性がプログラマーとして働いています。男女の区別なく、誰でもができる仕事の一つだと思います。
①この職業を選んだ理由はなんですか。
実は、僕は大学を出てから最初についた仕事は「プログラマー」ではありませんでした(バイク屋でバイクの整備の仕事をしていました)。
身体を壊してその仕事ができなくなり「なにかほかにできる仕事はないかな」と考えたときに、たまたま事務処理などでパソコンには触っていたので「パソコンを使う仕事ならなにかできるかもしれない」と思ったのがきっかけといえばきっかけです。
なので、僕の場合は「プログラマーになってやる!」と思ってこの仕事を選んだ、というわけではありませんでした。(これじゃあ答えになってないよね…?
ただ、ちょっと補足をしておくと、僕がちょうど中学生くらいの頃に「ポケコン(電卓よりちょっと複雑な計算ができるようなもの)ブーム」というのがあって、いま思うとそのポケコンで簡単なプログラムをしてみたり秋葉原に電子パーツを買いに行ったりとかはしていたので、もともと嫌いではなかったと思います。
「ポケコン」は50〜60歳くらいの男の人だったら覚えてるかも…。その当時は結局たいしたことはできませんでしたが、それでも当時の僕には「なんかすごいことができる秘密の装置」みたいな感じでした。
で、いまはどうかというと、プログラムを書く仕事が大好きです。休みの日にも(仕事ではないけれど)プログラムを書いていたり、はっと気づいたら朝までずーっとプログラムを書いていることもあります。
もともとこの仕事をしようと思って始めた仕事ではないのですが、「やってみたらすげぇ面白かった」というのが正直なところです。実際のところ、いまの仕事を始めたのは40歳を越えてからなのですが、それでもどうにかなるもんだと思います(笑)。
健康によくないので朝までやるのはお勧めできません(笑)が、それくらいには楽しい仕事だと思っているので、今ではこの仕事を選んでよかったと思っています。
②どうやって仕事を覚えましたか。
バイク屋を退職したあと、最初にハローワークで仕事を探していたのですが、ハローワークには失業して転職する人向けに「職業訓練」という制度があって、その中に「ウェブデザイナー講座」というものがありました。
もちろんそれまでデザインなどしたことはありませんでしたが、その時は「とにかくなにか次の仕事に就けるようにならなきゃ」と思っていたので、藁にもすがるような気持ちでその講座に申し込んだ覚えがあります。
そこではウェブサイトを作るために本当に初歩的なこと(デザインのことはもちろんですが、さきほどちょっと説明したHTMLとかJavaScript、PHPの書き方の基礎など)を勉強できました。
そのあと入った会社で、当時まだ学生でアルバイトをしていたM先生と知り合うことになったのですが、実際のところは会社に入って実務をしながらもずっと勉強の連続でしたし、実はいまでも毎日勉強しています。
ちょっと脱線しますが、その会社に入社したときは「PHPプログラマー」としてだったのですが、「職業訓練」で勉強したくらいでは全然仕事をするには技術が足りなくて、あっという間に「あ、こいつ全然プログラム書けないじゃん!」ということがバレてしまい、本当のところはプログラマーから現場監督に回されてしまいました(笑)。
でも、その現場監督のときにM先生と知り合って仲良くなれたので、将来なにがどうつながっていくかはあとになってみないと本当にわかりませんし、現場監督になってからも「お客さんの情報を全部入力したら、お客さんに返信するメールの文章が自動で作られる簡単なプログラム」を初心者ながらも自分で書いて現場のみんなで使っていたので、それはそれで勉強になりましたし、とても楽しく過ごしていました。
いわゆる「IT系」のお仕事は、実は『これで完璧』ということはない仕事です。今日はこれが最高でも明日にはもう新しい技術が出ていますし、自分ではもうこれで完璧だと思ったプログラムでもバグ(エラー、プログラム上のミス)があったりもします。プログラム自体は問題なくても、ハッキング(特に悪意が強いものは「クラッキング」と言われたりします)の攻撃を受けてプログラム自体を壊されてしまうことも起こります。 でも、完璧に動くことを求められます。
「一生勉強が続く」と聞いたらみなさんはきっと嫌だと思いますよね?でも、基本的には僕はどんなお仕事でもそうだと思っています。
みなさんのお父さん・お母さんはそれをこれまでずっと続けてきたわけですから、きっとみなさんもできるようになるはずです。
③働く上での喜びや楽しさはなんですか。
これは大きく3つある、と思っています。
ひとつめは「プログラムが思ったとおりに正しく動くように、きれいに書けたとき」で、これは本当に嬉しいです。
プログラムを書くときには、最初がどんな状態で、そのウェブサイトを訪れてなにか操作する人(これはみなさんかもしれませんね)がどんな入力(どこかのボタンを押す、名前を入力する、など)をするか、その人はそのあとそのページがどうなることを期待していて、それが直感的に正しく伝わるか、使いやすいか、その人が思っているとおりに動いたか、をまず想定して、そのとおりにプログラムを書いていきます(こういったプログラムの「動きかたのすじみち」のことを「ロジック」と言ったりします)。
その途中で「プログラマーが想定していることと違う入力をされたときにどうするか」を想像したり、入力された内容によって表示のパターンを変えたり、「操作した人が思っていることと違う動きにならないか」などあらゆる可能性を検討していきます。
例えば名前を入力したあと急に画面が真っ白になっちゃったら「え?どうなったの?これ大丈夫??」ってなりますよね?
なので、もしなにか間違った操作があった場合でも「それは違うのでこうしてくださいね」っていう表示を出して、操作している人が迷わないようにプログラムを書くのも僕らの仕事です。
ふたつ目はお客さんに喜んでもらえたときです。この「お客さん」には2つの意味があって、ひとつはユーザーさん(ウェブサイトを訪れてくれた人)に満足してもらうこと、もうひとつはクライアントさん(ウェブサイトの所有者・運営者)に満足してもらうことです。
僕の主な仕事は「受託」と言って、クライアントさんから「ホームページがほしいから作って!」と注文をいただいて、あらゆる条件を考慮してウェブサイトを作ること(場合によっては、作ったあとも更にもっとよくなるように一緒に改善を加えていくようなこともあります)です。
ウェブサイトがほしいと言うからには、そこにはなにかクライアントさんの目的があります。それはお客さんを増やしたいということかもしれませんし、商品をもっと売りたいということかもしれませんし、まずは自分の会社のことをたくさんの人に知ってほしい、ということかもしれません。
ウェブサイトを訪れてくれたユーザーさんに使いやすく、必要な情報がわかりやすく、そしてクライアントさんの売上が伸びたりしてみんなが嬉しい(そして僕もお金が入って嬉しい)のが僕にとって嬉しい、僕が目指すところです。
そしてみっつ目は「チームでなにかを成し遂げる」ことで、これもとても楽しく、そして嬉しいことです。
先ほどちょっと触れましたが、僕は一般的な人より遅れて今の仕事を始めたので、あれもこれもできるような万能なプログラマーではありませんし、残念ながらその能力もないようです(笑)。でも、チームを組んでやっていると僕ができなくても他の誰かがきっとできます。そして、他の誰かができないことを自分が手伝って終わらせることもできます。このことは僕にとって最も重要なことだと思っています。
僕はウェブサイトを作る会社に勤めていますが、その中にはデザイナーもいますし、ディレクター(仕事の進め方を考えて決めて、実際に進めていく人)もいます。僕がいる会社は小さいので、僕もプログラマーといいながらちょこっとだけデザイン(といってもパーツを並べる、というレベルですが)をすることもありますし、ディレクター的な仕事をすることもあります。小さい会社だと、「いつもただ一つの業務だけをしている」わけにはいかなかったりします。でも、チームで動いていることで、コミュニケーションを取りながらチーム全員で最もゴールに近い方法を探して仕事を終わらせていくのはとても楽しいことです。パーティーを組んで敵を倒していく、ちょっとしたゲームみたいな感覚でもあります。
なかには「フリーランス(会社に所属するのではなくて自分だけで仕事をしていく働き方)」という立場を選んで、自分ひとりだけでなんでもこなす人もいますが、そういう人でもチームを組んで仕事をすることはあるでしょうし、「頼れる仲間がいる」ことほど力になることはありません。
みなさんが将来なにかの仕事に就くとき、僕が思う最も重要視してほしいことは「頼れる仲間とチームを組んでできる仕事かどうか」だと思っています。
④働く上での苦しさや難しさはなんですか。
「プログラマー」という立場からはちょっと離れてしまうのですが、一般的な『働く上での苦しさや難しさ』について書きますね。
最初に書きましたが、僕はもともとバイク屋で働いていて「プログラマーになろう」と思ったことはありませんでした。今の仕事が「天職だ」と思ったこともありません。身体を壊していなかったら、いまでもバイク屋で毎日油まみれになってバイクの整備をしていたんじゃないかな、と思うこともあります。「自分が最もやりたいと思っている好きなことが仕事にできないこともある」というのも、ひとつの「仕事の難しさ」かもしれません。
もともと大学では「工学部機械工学科」の専攻で、学生の頃からバイクに乗ったり整備したりすることが大好きだったので、そのころすごく有名だったバイク屋(当時はレースに出たりもしていました)で働けることがとにかく楽しくて嬉しくて、どんなにキツい仕事でもキツいなんて思わなくて、毎日があっという間でした。
でも「好きなこと」と「仕事にすること」とは実は目的が全く一緒ということはなくて、どんなに好きなことでも仕事にすると「お金を稼ぐ(つまりそこに「責任」が発生します)」ために割り切らなくてはいけないことや、泣く泣く諦めなくてはいけないこともたくさんあります。
みなさんにはまだ仕事を決めるまでたくさんの時間がありますので、いまは「そういうこともある」ことだけ知ってもらえれば充分です。
「仕事をしてお金をもらう」ということは「その分の責任を持つ」ことと一緒です。もちろん、「安いものだからそれだけの責任しかない」というものでもありません。
みなさんのなかで「バイク屋になりたい」なんていう人がいるかどうかはわかりませんが、バイクの整備で「ネジを一本締め忘れたら」どうなるでしょう?バイクに使ってるネジなんて安いのはせいぜい1本100円しないくらいです。でも、それが原因で大事故が起きたり、最悪の場合人が亡くなってしまうかもしれません。すべての仕事に人の命が関わるわけではありませんが、仕事をする、ということにはそれくらいの責任があります。
とはいえ、いまの時点のみなさんの興味は「好きなことを仕事にしたい」というところではないでしょうか。好きなことならばきっとそこに没頭できるし、それこそご飯を食べるのも忘れて熱中できるようなものなら最高です。僕もバイク屋に勤めていたときは本当に毎日嬉しい気持ちでした。でも、「仕事には責任が伴う」ことは間違いありません。『働く上での苦しさや難しさ』は『責任の重さ』なのかな、と思います。
そして、もうひとつ覚えていてほしいのは「あなた『ひとりだけ』が仕事の責任をとる必要はまったくない」ということです。そのためのチームですし、そのための先輩であり、そのための社長であり、そのための会社です。もちろん仕事だからといって最初から無理な責任を押し付けられるのなどは論外です。
自分ができる最大限の努力は必要ですし、自分でやると決めた仕事であればその責務を全うしなくてはなりませんが、だからといって個人が仕事の責任を取る必要は一切ありません。そこをみんなで共有できる人たちとチームを組めるかどうか、そこが大事なのではないでしょうか。
⑤働く上で必要とされていることは何ですか。
だんだん難しい質問になってきましたね(笑)
最低限の技術があることはある意味「当たり前」と見られてしまうのが仕事です。なので、「仕事に対する姿勢」という観点から回答します。
僕が「仕事に対する姿勢で必要とされること」として思うことは2つあります。
ひとつは「正直であること」です。
先ほども書いたように、「仕事=責任」だと思っています。とはいえ人間ですから、誰しもが失敗したりうまくいかなかったり、思っていたのと違っていたなんて言うことは当然のように起こります。どんなに凄い人であっても失敗はします。でも、凄い人が本当に凄いところは「失敗からのリカバリーの速さ」にあると思っています。
では、僕のように凄くない人が失敗したときはどうしたらいいでしょう?それはとにかく早くチームに共有して、チームで次善の策を考えることです。
仕事ですから、必ずその期限があります。なにか失敗してしまったとしても、すぐにその対策をみんなで考えればきっと期限までに立て直せるでしょう。
でも、失敗を怒られることを恐れていてすぐに言い出せず、期限直前まで自分だけでどうにか解決しようとしていたらどうでしょうか?そうなってしまったら、チームの他の全員の手を借りて他の仕事は全部止めてその修正にあたったとしても間に合わないかもしれません。それではチームのみんなも、もちろん仕事を発注していた人も、誰も幸せになれません。
失敗を伝えた直後は確かに怒られるかもしれません。でも、その対策をチームでできるならアイディアや対応方法はいくらでも出てきます。そのためのチームです。
僕の会社での仕事の場合、そのチームに仕事の発注元のお客さんが入っていることも少なくありません。その場合、お客さんも含めて対応策を練ることができます。そういうチームを作れるようにしていくのも仕事の一つだと思いますし、それが仕事に対する真剣な姿勢だと思っています。
責任から逃げてはダメです。仮に逃げられたと思っても、その後にもっと大きな責任に必ず捕まります。そして、大人になるにつれて責任はだんだん重くなっていきます。
でも、そうなったらすぐに一人で背負える限界になっちゃいますよね?
それがチームだったらどうでしょう。一人が背負わなくてはいけない責任をみんなで分けたら、一人の分は人数分で割った量になりますよね?仲間でまず志を一つにして、どうするのがみんなにとって一番いい方法か考えましょう。
自分が負うべき責任ももちろんあるでしょう。でも、誰だってそれを超えてまで無理をすることはできません。無理をしても、結局は個人にもチームにも良い結果は得られません。それは仕事ではなかったとしても、きっとどんなことでも一緒ですよね?
一人では背負いきれない責任には、仲間の力を借りて立ち向かいましょう。それがチームへの信頼や次の仕事につながっていくんだと思います。
そしてもうひとつは「毎日本当に少しずつでもいいから進歩し続けること」です。
これは仕事に限った話ではないですし、僕自身も正直できているとは言い難いのですが(笑)、毎日少しずつでいいから新しいことを勉強する、今日やったことを繰り返す、できるようになったことを書き留めておく、なんでもいいのでとにかく決めたことを続けましょう。
長いこと続けていると、途中でそれがただの惰性になってしまったり嫌になることもあるでしょう。でも、がんばってそれを乗り越えてください。目的は『続けることに自分を慣らしていく』ことです。
凄い人ならそんな地道な努力をしなくても簡単にできてしまうかもしれません。地道な努力は全然かっこよくは見えません。でも、「続けられること」は才能です。しかも、その才能はもともと持っていなくても後から自分の努力で身につけられるものです。これは「普通の人」が持てる最強の武器だと思っています。続けていると、その経験をたくさん得られます。そして、「継続する力」が身につくとどんどん仕事が楽しくなって、どんどん仕事が好きになるでしょう。
本当は勉強もそうだと思うのですが、僕は結局勉強が好きではなかったので違うかもしれません(笑)。
⑥働く上で気を付けていることはなんですか。
「チームで働く」というところと関連するかもしれませんが、どんなときやどんなタイミング、どんな人でも『一方的に相手を否定しない』ということでしょうか…。
チームでの働き方というより「生き方」みたいな話になってしまうかも(笑)なんですが、どんなところでも「意見が合わない人」というのはいますし、エキサイトしてしまって口喧嘩になってしまうこともあるかもしれません。でも、そんなときであっても「相手の意見には反対するが、相手の存在を否定するようなことはしない」ことはとても重要だと思っています。
ここ最近のニュースを見ているとわかるように、世界中で対立が起きていて、それは日本も例外ではなくなっています。コロナ禍のこともあって、みんなの心の余裕がなくなってしまったことも理由の一つだとは思います。
でも、だからといって相手の存在を否定するような言動や行動は許されません。自分が「正義」とか言い出したときには、必ず相手には相手の「正義」があります。どんなときであっても、相手を傷つけていいことなどありません。
僕は仕事柄インターネットのことにちょっとだけ詳しいのですが、インターネット上での匿名の誹謗中傷などは最たる例で、それで命を絶つ人がいるほどです。
心の余裕がないことには同情しますが、それが人格攻撃や誹謗中傷になってしまうのはあまりに短絡的で思慮の足りない行動です。これはみなさんの身近な問題でもあると思いますので、これだけは本当に気をつけてほしいと思っています。
インターネットの最も素晴らしいところは、いますぐ自分の意見を世界中に発信できることです。自分が世界の一員であることをいますぐとても身近に感じることができるところです。インターネットには、その「強さ」があります。
その一方、なにか不用意にしてしまった発言や行動が一瞬で世界中に知れ渡ってしまいます。よくある「炎上」というやつですね。なので、誰もが「発信する強さ」を持っているメリットとデメリットを本当によく考える必要があります。
いま炎上している人たちは、その強さの「デメリット」に思いが至らなかった人たちです。その点は反省すべきでしょうが、「みんなが炎上を叩いてるから自分もそれに乗って一緒に叩く」のではまったく主体性がありません。ある意味、インターネット上の意見はいまや武器よりも力を持っています。みなさんには、どうかその点を充分に注意してほしいと思います。
⑦働く目的や意味を教えてください。
最後にすごく難しい質問がきてちょっと困っています…。
いきなり夢のないことを書きますが、生きていくために働く必要がある、だから働く、という面は間違いなくあります。「お金を稼ぐためだけに働く」という選択があることも理解していますし、そういう生き方があることも否定しません。
僕自身ももちろん働かなければ生きていけないので働いている部分はあります。でも、できることなら働かなくて生きていきたいです(笑)。
『働く目的』と聞かれたときに、それはお金のためかと聞かれたら僕は「そうではない」と答えます。
「働く目的」 を「働いた結果なにを得たいのか」と言い換えるともう少し僕の感覚に近くなるように思うのですが、「働いた結果お金を得たいのか」と聞かれたら、「もちろんその面もあるけれど、それだけではなく『僕の存在が誰かの役に立っているという手応え』を得たいから働いている」と答えます。
これまでも書いたように、僕にとって「仕事をすること」は「チームで仕事をすること」とほぼ同義語です。僕にとっては仕事を依頼してくださるクライアントさんもチームなので、必ずチームで仕事をすると言い切ってもいいかもしれません。
そのチームの人たちにまずは喜んでほしい、そしてそれを利用するユーザーさんにももちろん喜んでほしい。その結果の対価としてのお金が受け取れるのであれば喜んでいただく、という感覚かなーと思います。
あまりにも抽象的でピンとこない話になってしまっているかもしれませんね…orz
『働く意味』と聞かれてしまうともっと難しいです。正直に言って、この質問を受けるまで『働く意味』について考えたこともありませんでした…。
僕がもっとデキるプログラマーだったら「新しい技術を開発して社会に貢献する」とか答えられるのかもしれませんが、僕には残念ながらそんな能力はありません(笑)。
先ほどの「働く目的」とも関連してきますが、「社会に貢献する」ような壮大なことはできなくても、身の回りにいる大事な人たち(家族や仲間、お客さんたちですね)に満足してもらうよう、喜んでもらえるよう日々努力しています。
「社会全体」とかだと大きすぎて全貌をつかめませんが、身近にいる人たち(あるいは自分が作ったものを使ってくれる人たち)のことならきっと想像できますよね?
仕事をしているときはいつでも「こんなふうにしたら便利かな?」「こうしたらもっと使いやすくなるかな?」ということを考えながらプログラムを書いています。
ちょっと話がそれますが、さきほど「インターネットには力がある」と書きました。世界中の誰にでも情報が届けられます。
インターネットの世界は「アクセシビリティ」ということを重視しています。「アクセシビリティ」を簡単に説明すると「情報の手に入れやすさ」ということです。
どんな人でも、例えばひとつの例として目が見えない人でも、当然いろんな情報がほしいですよね?でも目が見えない人はスマホの画面の表示を見ることができません。ではどうやってその情報を手に入れると思いますか?
目が見えない人がウェブサイトから情報を得ようとするときは、「音声ブラウザ」というツールを使います。例えばスマホでも、そのツールを使えばウェブサイトを全部機械の音声で読み上げてくれます。ウェブサイトをちゃんと「音声ブラウザ」に対応するようにしておけば、目が見えない人でもツールを使ってその情報を早く、正しく手に入れることができる、ということになります。
そういうところにも対応していくことは、もしかしたら「社会に貢献する」ことの一つかもしれませんが、実はこれは特別な対応ではありません。「あたりまえ」だと思います。
と言うのは、誰でも明日目が見えなくなってしまう可能性はゼロではないからです。怪我をしてしまったり、あるいはものもらいになることだってあるでしょう。だから、これは他人事ではないんです。
そんな人、そんなとき、そんな状態だったとしてもちゃんと必要な情報を早く、正しく手に入れることができる。それがインターネットの本当の力です。
最近よく聞かれる「SDGs」にもつながっていく話ですが、「社会に貢献する」ような大きなことでなくとも、どんな仕事にもちょっと気をつかうことでみんなが幸せになることはあります。
『働く意味』というキーワードから大きく派生してしまいましたが、みんながそうやってお互いを気づかい、少しずつでも暮らしやすくしていくことが『働く意味』なのかもしれません。
⑧アンケートへの回答を終えて
「サイキさん人生を語る」を読んでくれてありがとうございます(あれ、そんな企画じゃなかったっけ?
このアンケートで、これまでの僕の人生を見直す機会を作ってくれたことに感謝します。毎日慌ただしく、次から次に仕事をこなしていると、ちょっと立ち止まって自分のことをゆっくり考える時間というのは意外にありません。
僕にはみなさんよりちょっと年下の、もうすぐ小学校6年生になる娘がいます。その娘が中学生になって、「お父さんはなんでプログラマーの仕事してるの?プログラマーってどういう仕事?」って聞いてきたときになんて答えるだろう、と考えながら一生懸命書きました。
こうやって長く答えてきて、僕も自分の考えをだんだんまとめることができました。
僕にとって最も大事なものは『家族と仲間と経験』です。
そして、「仕事」とは『自分が最も大事だと思うものを、それを使って満足させる手段』なのではないでしょうか。だから、きっとどんな仕事であっても「最も大事なものを満足させることができる」ものがみなさんにとって最高の仕事だと思います。
逆に考えると、人それぞれではありますが仕事よりも優先すべきことがある、ということです。家族を持つと、「仕事が忙しいから」はただの言い訳になってしまう(笑)ので、うまくバランスが取れるようになるといいですね。
どんな仕事に就いても「それが本当に自分にとって一番いい仕事なのか」はわかりませんし、続けていくことで「一番いい仕事」になっていくでしょう。仕事をしていても、「この方法でいいのか」「これをやっていくのが正しいのか」を毎日考えます。
みなさんも毎日なにかを「選択していく」ことはたくさんありますよね?正直、「そのときにその選択が正しいか」なんて僕もわかっていません(笑)。でも、将来「あのときの選択は間違ってなかった」と言えるために毎日頑張るんだと思います。
人生にはお金が必要です。お金は大事です。お金がないとできないことは山ほどあります。みなさんもいずれ仕事をして「お金を稼がなくちゃいけない」ときがくるでしょう。
でも、先ほど僕が挙げた「最も大事なもの」はどれもお金では買えないものばかりでした。家族がいることで頑張れますし、家族のために頑張ろうと思います。仲間がいるから頑張れますし、仲間のために頑張ろうと思います。続けることでそれが自分の経験になり、それを誰かの役に立てることができます。
家族を大事にしましょう。いまはちょっとウザいかもしれませんが(笑)。
世の中にはこんなやたらとただ長い文章を子供に読ませようとするめんどくさいお父さんもいます(笑)。
でも、一緒にいられる時間を大事にしましょう。お父さん、お母さん、兄弟と一緒にいられる時間は人生のほんの一部でしかありません。最後の最後まで頼りになるのが家族です。世界中を敵に回しても子どもを守るのが親です。
仲間を大事にしましょう。いまの仲間が一生の仲間になるかもしれません。
なにかの目標に向かって進もうとするとき、仲間と一緒なら勇気が出ます。みんなで助け合えば、ひとりではできないことも成し遂げられます。
仲間が困っていたら手を差し伸べましょう。自分が困ったことがあったら、仲間を頼りましょう。お互い助け合えるのが仲間です。
そしてたくさん経験しましょう。それがみなさんの力になっていきます。経験が増えれば、そのぶん自分が背負える責任の限界もどんどん上がっていきます。そうすれば、たくさんの責任が降り掛かってきても「よっしゃ、どんとこい!」と言えるようになるはずです。
みなさんが将来「どんな仕事に就こうか?」と考えたとき、僕がここに書いたことがなにかの役に立てば僕にとって最高の喜びです。
誰もがみなさんの将来を応援しています!ありがとうございました!
※仕事をしている時の写真をいただくことは可能ですか。
もし可能であれば送っていただけるとありがたいです。
ご多分に漏れず、いまの仕事ではテレワークをしています。
これが仕事場、というか仕事のスペースで、普段はこんな感じでパソコン1台とモニター2台を使っています。
会社のメンバーとは、毎日 zoom(オンラインミーティングツール)を使っています。
これが「仕事をしている時の写真」なんですが、これで大丈夫ですかね…?
ちなみに、右下が僕です(今日は普通)。
眼が光ってる死神とか背景がフライドチキンなヘビとか侍いるし、仕事中なのにみんなめっちゃ笑ってるけど、これが僕の大好きな「頼れる仲間たち」です(笑)。
でも、チームのみんなとこうやって普段からコミュニケーションを取っているので、テレワークだから不便だと感じることはほとんどありません。
ウェブのプログラマーの仕事のメリットの一つとして、「テレワークしやすい」ということは言えるかもしれませんね。
あらためて
読み直してみたらわりとヒドい(笑)。
エモいのを通り越してキモい領域に足を踏み入れていそうだ。最後の写真が仕事中だとか言ったら「プログラマーを舐めるな」と各方面からお叱りも受けそうではある。まぁこれは特殊例だし、こんな働き方ばかりではないが、インタビューしてみたらこんな変な奴に当たっちゃったのが残念だったということでご容赦いただきたいところだ。
本当に申し訳ないと思うのは、「働く目的や意味」とか聞かれてもこれまでちゃんと考えたことなかった、ということだろうか。おかげで考える機会を得られた、というのは本当に貴重な経験だったと思う。
M先生、声をかけてくれて(思い出してくれて)本当にありがとうございます。こんな経験はそうそうできないと思うので、とてもありがたいことでした。
ちなみに、「⑧アンケートへの回答を終えて」の項目はもともとのアンケートにはなかったものを僕が勝手に付け加えている(笑)。
これを読んでどれだけの中学生が「プログラマーになりたいな」と思ってくれるかはかなり怪しいと思うが、『仕事って楽しそうだな』と感じてほしいとは思っている。仕事なんてだいたいが楽しいものではないし、どちらかといえば苦しい・大変なことが多いと思う。でも、それを乗り越えられるだけの喜びだったり満足が得られるものだとしたら、「ちょっとやってみようかな」とは思えるのではないかと思う。
そういえば、ちょっと前にツイッターで「子どもたちが社会科見学に来たら、大人たちは実は超張り切ってる」というのを読んだ。
https://togetter.com/li/1660006
これだけ長い文章を書いちゃったのはこれと同じ感じなのかなーとも思ったが、ただ書きたかっただけかもしれない(笑)。