この記事は「 WP ZoomUP Advent Calendar 2021 」の21日目の記事です。
サイトの表示は速いに越したことはない
WordPress に限った話ではないのだが、ここ最近は「Web ページの表示の速さ」は非常に重要になってきている。
サイトを訪れるユーザーにとって、表示の速さはユーザビリティの面からも大事なポイントで、Google もそこを重要視しているからというのがその大きな理由だ。
仕事で Web サイトの制作をしている人でなくとも、例えば自分でブログを立ち上げているような人であれば「Core Web Vitals」というキーワードには聞き覚えがあるだろう。
これは Google が提唱している「今後の検索結果表示に影響する指標」になっていくもので、
- LCP(Largest Contentful Paint)
- ページ内にあるいちばん大きなコンテンツが読み込まれるまでの時間
- FID(First Input Delay)
- ユーザーが訪れたページで最初に行った入力に対して、ブラウザが反応するまでに要する時間
- CLS(Cumulative Layout Shift)
- ページの表示後に(あるいは表示の途中で)閲覧中のユーザーが意図していない「レイアウトの『ズレ』」がどれくらい発生したかの割り合い
の3つを「Core(核)」としているものだ。
この記事では「『SEO 対策』としてのキャッシュ」について詳しく解説するつもりはないが、結果としてこれらの要素が改善されることで検索上位に表示される「可能性が増える」とは言えるかもしれない。
Google は今後「Web Vitals」を検索結果に反映すると表明しているし、その中でも特に重要視されるものが「Core Web Vitals」だからだ。
これらは PageSpeed Insights で手軽にチェックできるので、まずは現状を把握するのが重要だ。制作者であれば当然チェックしているだろうが、ウェブ上で簡単に確認できるので誰でも「いまどんな状態か」を見ることができる。
PageSpeed Insights はあくまでもひとつの「指標」なので、これだけにこだわるのはナンセンスだとは思うが、現在の問題点を把握する意味での目安になるだろう。
SEO の観点を除いたとしても、実際のところサイトが表示されるまで延々待たされるようであれば、閲覧しているユーザーが「まあいいか」となって離脱してしまうことは往々にしてありがちだ。
これはもちろんサイトの問題だけでなくその時の回線状況などの閲覧環境にも依るし、特にレンタルサーバーならばサーバー自体の影響も考えられる。
とはいえ、サイト側で対策できるならばしておいた方がいいのはもちろんのことだ。
特に WordPress の場合、うっかりしているといじればいじるほどどんどん表示が遅くなってしまう危険性もある。
機能をてんこ盛りにすることでデータベースとのやりとり(これは「クエリ」と呼ばれる)が極端に多くなったり、データベースでの検索がめちゃくちゃ複雑な条件になってしまい、そこに時間がかかって結果として表示が遅くなるというのはよくある話だ(自戒を込めて…
WordPress ならまずはプラグインを検討してみよう
Web ページの表示を速くしたいと言うときにまず思いつくのは「キャッシュ」ではないだろうか。
「キャッシュってなに?」という方にはまず以下の記事が参考になるだろう。
ここで言う「キャッシュ」はサーバー側でのキャッシュのことで、WordPress で言えば、サーバーにアクセスがあったときに毎回 WordPress でページを生成する(WordPress はもともとそのように動いている)のではなく、キャッシュされたページを表示するのでレスポンスが速くなる、というもの。
ただし、中には「毎回データを取得する必要があるページ」も存在するし、設定なども考えると特に初心者は「ちょっと難しそう」と尻ごみしてしまうこともあるだろう。
例えば『WordPress キャッシュ プラグイン』というキーワードで検索してみると、多くのブログ記事がヒットすることからも、「キャッシュ」に対する注目度が分かろうというものだ。
Surge
先日 WPTavern の記事で紹介されていたのだが、新しいキャッシュプラグイン「Surge」が公開されたとのことなので今回はそちらをちょっとみてみよう。
このプラグインの「ウリ」は、なんと言っても「一切の設定が不要」というところではないだろうか。
プラグインをインストールして有効化するだけ。ダッシュボードに設定画面はないし、設定に項目が追加されることもない。
「サイトの表示を速くするのにキャッシュがいいとは聞くけど、設定をどうしたらいいのかわからない」というユーザーにはうってつけだろう。
キャッシュプラグインで気をつけるべきところは「キャッシュを効かせないところはどこか」という点だ。
例えばログイン情報などがキャッシュされてしまうと致命的な情報漏洩にもつながりかねないので、取り扱いには注意が必要。
このプラグインだと細かい設定ができないので会員ログインなどが必要なサイトには向かないと思われる。
他方で、いわゆるブログや一般的なコーポレートサイトなどであれば、なにも考えずに高速化できる可能性を秘めている。
他のキャッシュプラグインとの併用はできないが、まだキャッシュプラグインを利用していなくてキャッシュの利用に二の足を踏んでいる人ならば試して見る価値はありそうだ。
キャッシュがうまく効かない、あるいはキャッシュが適切に解放できないなどのトラブルがあった場合は、是非プラグイン作者にフィードバックしていただきたい。
DynaMo
一方で、「翻訳を高速化する」という一風変わったアプローチで高速化するプラグインが「DynaMo」だ。
WordPress はもともと英語をベースとして多言語化されていて、例えば日本語で利用しようとした場合は「日本語翻訳ファイル」を読み込んで日本語を表示している。そこを高速化しようというのがこのプラグインだ。
このプラグイン、実は WP ZoomUP のスタッフ仲間でもあるほんださんが日本語への翻訳をしていて知ったもの。
この記事の掲載時点でプラグインのリリースからまだ3週間程度。いったいどこで見つけてくるんだろう…(笑
このプラグインも前述の Surge 同様、設定項目はなくただ有効化するだけである。
プラグインの説明ページによると、
WordPress の通常の方法とは別の方法で翻訳を処理するため、パフォーマンスが向上します。どのくらいサイトのパフォーマンスが向上するかは、プラグインのインストール状況によります。
とのこと。中の仕組みはよくわかっていないのだが(笑)、翻訳ファイルが適用されるところは高速化できる、ということのようだ。
まとめ
今回はごくごく簡単に WordPress の Web サイトを早く表示するために利用できるプラグインを紹介した。
残念ながら「Surge」はまだ試せていないので(試してもいないものを紹介するのか、という話はいったん置いておいて…)、どこかのタイミングで試してみたいと思っている。「DynaMo」は有効化してみたので効果に期待。翻訳ファイルが適用される部分の高速化なので、主に管理画面側のスピードアップが期待できそう。
解説にも書いたように、今回紹介したプラグインはどちらも「設定が不要」だ。「ただ入れて有効化するだけ」ならば手軽に試せるだろう。
効果が現れるまでには少し時間が必要かもしれないが、興味がある方は試してみてはいかがだろうか。
今回は僕にしては珍しく短い記事になった。
僕の場合、表示を速くするにはまずは文章量を減らすのが手っ取り早いのではないか、というツッコミは自分で入れておくことにする(笑