この記事ははたらくLENSからの転載です。
こんにちは。mgn の齋木です。
今日のお題は「イベントスタッフ」です。ご存じの方もいるかと思いますが、ウェブ関連のイベントによく参加なさっている方であれば「あー色んなとこにいつもいるよね」と言われる程度には、僕は色々なイベントでスタッフをしています。
これも書き出したら相当長い記事になりそうな予感がプンプンするので、要点をかいつまんで。
残念ながら誰にでも役に立つ内容ではないかもしれませんが、今の自分の状況に困っている人・迷っている人の一助になれば幸いです。
そもそもの経緯
過去にも何度か似たような趣旨の記事を書いているし、繰り返しになってしまうのだが、僕は結構な数のイベントでスタッフをしている。
ざっと思いつくだけでも
- WordPress 公式関連多数
- JavaScript 祭
- DIST
- Spectrum Tokyo
- Design Matters
- WPZoomUP
- CSSNite(オフライン時)
くらいにはスタッフをしている。
ここ最近はコロナ禍の影響もあってイベント自体が少し減っていた、ということもあるが、以前お手伝いしていたものも含めればもっと多い。あとは自社主催のイベントとか。
まぁこんなにスタッフやっててアホか、という話なのだが、もともとこうなったのには(自分としては)深い理由があるので、それを共有しようと思う。
最初は知り合いを増やして知識を得るため
Webとは全く関係ない仕事から転職してきて、職業訓練校には通ったものの「この程度で仕事になるわけがない」というのはまあ想像に難くない。
自分で言うのもなんだが職業訓練校では相当真面目に(というか「必死に」というのが適切かもしれない)勉強したので、ごく最低限の知識と技術は得られたと思う。とはいえそんなのは「最低限」であって、それだけですぐ仕事になるような甘いものでないことくらいは初心者の自分でも分かることだし、以前の職場がいわゆる「職人」の仕事だったので、まずは知識と経験がものを言うのは当然でもあった。
転職した時点で40代半ばということもあって周りはみんな自分よりも歳下だったけれど、なりふり構ってなどいられずに、とにかくいろんなところに出向いては教えを乞う毎日だった。これはいまもあまり変わっていないかもしれないけれど…。
そもそも勉強会やイベントに参加しても基礎がないのだから聞いてもわかるわけがない。知り合いもいないから聞ける人もいない。ただ参加しても、そこに身体がいるだけで「わからないことがわかる」だけだった。
懇親会に参加して他の参加者と話をするとみんな興味をもって話を聞いてくれたけれど、それでもちゃんと知識を得ようと思うと足りなかった。
そこで、そのイベントの主催者や登壇者ともっと仲良くなって詳しく話を聞けるようになるにはどうしたらいいか考えた結果が「スタッフになる」だった。
やってみたら楽しかった
そんなこんなでスタッフ業務を手伝うことになった(というか正確には「スタッフにしてもらった」)わけだが、実際にスタッフをやってみたらいいことばかりだった。
まず、なによりやはり「身体を動かす」ことが楽しかった。
最初はなにもわからないからたいした作業は任されない。とにかくなにか必要なものを取りにいくとか場内の案内をするとか、体力勝負のタスクをもらう(ことが多い)。任せる側も「こいつはなにができるんだ?」を知らないわけだから、まあ最初は当たり障りのない難易度の低い仕事からすることになる。これは別にスタッフ業務だけじゃなく、仕事でもそうだろう。
もともとバリバリ肉体労働の現場にいたので、身体を動かすことならお手のものだ(これはそれしかできない、と言ったほうが正しい)。
おかげでこんな自分でも役に立つことができたらしい。
何度か参加していると他のスタッフや参加者に顔を覚えてもらえて嬉しかった。
その当時から「懇親会が本番」だなんてまことしやかに言われていたが、これは本当にそうだと考えている。少なくとも僕の経験から言えばこれは真理だ。
イベントの開催中はバタバタしていて誰かとゆっくり話す余裕もないが、懇親会であれば、たまたま隣り合った人とあれこれ話したり聞いたりするのはとても楽しかったし、その場で色々教わることもできた。
とにかく手当たり次第に色々なイベントでスタッフをしたが、僕の専門外のイベントだったとしても勉強になることはたくさんあったし、とにかく全くの未知の世界で少しずつ知り合いが増えていくことは単純に嬉しいことだった。
普段知り合えない人と仲良くなる
もともとスタッフを始めるときの目的のひとつ、「技術や情報に詳しい人と仲良くなる」ことは、ごく初期の段階ですぐに達成できた。
なにより、スタッフ業務を手伝うことでそのイベントの主催者や登壇者と仲良くなれたことは本当にありがたかった。
イベントを主催する人はだいたいの場合そのテーマについて詳しいひとで、登壇者はもちろんそれらについて詳しいし、他者とは違う視点を持っていたり新しい技術を紹介してくれたり、わかりにくいところを砕いて説明するのが上手だったり、初心者の自分には「先生役が身近にいる」ことはとてもありがたいことだった。
僕はエンジニアだが、実際に仕事をするときに自分だけで完結することはないといっていい。ディレクターやデザイナーとコミュニケーションをとりながら実装することになるし、クライアントとのミーティングに参加することもしばしばある。
イベントでそういった自分とは違う立場のひとの考え方や仕事の進め方を聞けたことも、僕にとってプラスになることだらけだった。
それこそマーケターや法務関連などの、普段関わる機会がほとんどないような立場のひとの話が聞けるのはイベントならではだし、ただ参加者としてだけでなくスタッフとしてコミュニケーションを取れるのはメリットしかないと思うがどうだろうか。
最初に「誰にでも役に立つ内容ではないかも」と書いたが、この考え方は特に初学者にとっては有用だろうと思う。そして、自分とは別の視点を持つ立場の人の考え方を知る機会としてもとても貴重なものだと思う。
なぜそんなことをする?
ここまでで、ほぼその回答は書いてきたのだけれど、スタッフ業務は僕にとって役に立つことしかなかった。だからずっと続けてきたし、いまでも続けている。
技術的なことを知ることはもちろんだが、普段接しないひとと知り合うことで新しい視点を得られたり、スタッフ業務の中で割り振られた仕事を自分なりに解釈して改善案を伝えたり、効率化を図って少しでも業務の無駄を減らしたりすることも楽しかった。
僕にとってそれら全てが勉強だったし、実際にいまに活きていると思っている。
そして何よりも、「誰かに必要とされている」ことを実感できたことは大きかった。
こんな自分でも、全くの未知の世界へ足を踏み入れた最初は不安だらけで、なにをどこから手をつけたらいいものか、なにができるのかなにも見えていない状態だったが、その指針を得る貴重な機会になったと思っている。
たくさんの先人たちのお陰でいまの自分があるのは間違いない。
自分に割り振られた業務が、例えば会場の外での看板持ちだったとしても、そのときにできることはたくさんあるのだ。
自分に割り振られた業務はもちろん、参加者の利便性を考えたり工夫するのは楽しいし、運営側を中から見ることで「どう運営するか」「なにを優先するのか」を勉強できた。いざ自分が運営する側になったときにその経験も活かせていると思っている。
いつの間にか古株に
そうこうしているうちに、ズブの素人だった僕もいつのまにか古株と言われるようになり、気づけばスタッフ歴も10年以上になった。
色々なイベントでお手伝いをしているおかげか、知り合いも増えたし、mgn で働くことになったのも、そもそもはイベントでめがねさんと知り合ったことがきっかけだ。
自分が主催者としてイベントを開催するようにもなったし、コロナ禍を挟んでオンラインのイベントもするようになり、UD Talk を使ってリアルタイムの文字起こしを付与するのもわりと普通にできるようになってきた。
アクセシビリティについても、もともとイベントのセッションを聞いて興味を持ったのが始まりで、まだ全然知識も技術も足りていないけれど「意識」は欠かさず対応できるようになったと思っている。
イベントの開催規模の大小に関わらず、どんなイベント・勉強会でも役に立つことはあるし、スタッフとして見ても、それぞれの規模によってまた違った苦労ややりがいがあるものだ。
ただ漫然とイベント・勉強会に参加するのではなく、自分の目的をもって積極的に参加することで得られたものは本当にたくさんあると思う。
そして、たくさんのイベントに参加していくうちに色々細かいところにも気づくようになった。オンライン・オフラインに関わらず、参加者にどう体験してもらうか、登壇者にどう楽しんでもらうか、よりよいイベントにするにはどうしたらいいか、やりたいことややるべきことはまだまだたくさんある。
そしてこれからも
そうこうしているうちに身体が思うように動かなくなっていくのは間違いないが、身体を動かすだけがスタッフ業務ではない。
自分が得た知識を言語化し、これからの人たちへ伝えていくのも大事な役割のひとつだ。歳を重ねると知識や経験は増えるけれど、いつでも初心を忘れずに、いつも「これがベストな選択か」を考えながら対応していきたいと思っている。
どこかのタイミングでスタッフ業務はできなくなるかもしれないが、これまでに得たものは自分だけのものではないので、これからに活かせるように協力できるようにしていくつもりだ。
僕がスタッフをすることで得たものはもちろんイベントや勉強会の運営のことだけれど、色々なことに気を配って違和感や不具合に気づくことや自分から動いて問題を解決することは仕事にも活きている。よく考えたら学生時代のバイトのころからそんなことを続けている。そのおかげでいまもどうにかこの世界の隅っこでやっていくことができているんだと思う。
自分ひとりでできることは本当に限られているし、そもそも才能なんて持ち合わせていない凡人にできることなんてたかが知れている。
それでも誰かと協力すれば自分では思いつかないようなことができるし、「自分が誰かに必要とされている」ことを実感できる。僕は自己肯定感がわりと低い(笑)ので、それを実感できるのはとても嬉しいことだ。
スタッフ業務を通じて知り合った人たちから教わってきたことは、そのままその人の知識と経験の賜物だ。そのおかげでいまの自分があるので、今度は僕がその恩返しをする番だ。
そんなこともあって、最近も WordCamp Kansai 2024 や WordCamp Asia 2024 でも当日ボランティアとして手伝う機会に恵まれた。特に海外のイベントのボランティアは言語の壁があってなかなか大変ではあるが、イベント運営自体にあれこれ慣れてきたこともあるので、タスクを丸投げされてもどうにかうまいことやれるくらいにはなったと思う。
随分前に書いたブログで「巻き込まれ力」について書いたことがある。
仮に自分でなにかを立ち上げたり主催するのではなくとも、そういう人たちのそばで自分にできることをすることでも誰かの役に立つし、結果それが自分の役に立ってきたということが、この十数年で僕が得てきたものだ。
積極的に「巻き込まれ」よう。
先のことはわからないけれど、誰かのために動くことは、回りまわって必ず自分のためになるのだから。